KPIを 決めても、 自律の 力は 出し切れていなかった
HR.Aは、提供価値を最大化する方法の一つとして、メンバーが自分で判断して動く「自律駆動」を体制の基本にしています。ただ、その自律が持てる力を100%出し切れているかというと、まだ上げられる余地があります。 毎月のKPI会議も、「結果発表会にしない」と決めて実行してきたが、徐々に報告して終わる場に近づいていた。そこで私たちはKPIを全員で定義し直しました。正確なKPIを見つけ出して設定することよりも、そこに至るまでの話し合いを徹底的にすることが重要だとかんがえm
課題
何が、 起きていたか
- 誰の課題か
- HR.A
- どの業務か
- KPIの定義
- 症状(定性)
- 日々の業務判断は自律的に回っている。ただ、追うべき数字は「経営陣が決めたもの」のままで、なぜその指数なのかについても、各人の理解にばらつきがあった。総じて、なぜその数字を追わないといけないのかの解像度が低かった。「結果発表会にしない」と伝えていたKPI会議も、報告して終わる場に近づいていた。
- 段階
- 顕在化した課題
- 放置すると
- 何のために何を追うのかが深く理解されていないと、自律的な判断の速さも強さも上がりきらない。提供価値(品質、速度)を高められる余地を残したままになる。
HR.Aは、お客様への提供価値を最大化する方法の一つとして、「自律駆動」を体制の基本にしています。
自律駆動には2つの面があります。一つは、働き方の自由度と柔軟性です。力のある人が、自分に合った形で力を発揮しやすい環境という側面です。もう一つは、判断の速さの側面です。日々の業務の判断を一人ひとりが行えるので、いちいち上司や関係者に確認しなくても仕事が前に進みます。判断が速ければ、行動も速くなります。
ただ、自律は「任せる」だけでは機能しません。何のための会社なのかという目的や理念、行動指針、ルール。そして、特定の人に頼らずに回るよう設計した業務やシステム。そうした目指す先や、行動の規範や仕組みがあって初めて、一人ひとりの判断が同じ方向を向きます。KPIも、その土台の一つです。
私たちの自律駆動で業務自体は回ってはいました。ただ、持てる力を出し切って最高の提供価値を提供できているかというと、まだ上げられる余地があると感じていました。
それが表れていたのが、毎月のKPI会議です。数字を報告する場ではなく、自分で考えて次の手を決める場にしたい。最初からそう伝えていました。それでも会議は、少しずつ結果発表会に近づいていきました。達成したもの、届かなかったもの、また来月。伝えるだけでは、変わりませんでした。
考えた末に原因は、KPIの指数の意味自体は理解しているが【なぜその指数なのか】【どういう文脈なのか】【その指数の周辺にはどういう指数があるのか】【その指数を追うことのリスクは何か】などの解像度が全体的に低い点があった。
この解像度が高くないと自分の判断で速く、強く動くことはできません。
「KPIを決めることより、この過程に参加して「確かにそうだ」と自分の中で納得できるかどうかの方が大事だ。」
HR.Aのアプローチ
どう 考えて、 動いたか
- 1
経営が決めるのは枠まで。KPIは全員で導き出した
KGIのカテゴリだけを経営が決め、何を追うか、なぜ追うかはメンバーと一緒に考えた。期日を決めて決め切ることより、全員が納得して導き出すことを優先し、4回に分けて、合計9時間をかけた。
- 2
数字の前に、背景を共有した
何に力を注ぎ、何をやらないかという戦略から、会社が大事にしている提供価値、代表がこの会社を始めた理由まで共有した。KPIを理解するとは、数字の定義だけでなく、その周りにある文脈まで分かっていることだと考えている。
- 3
KGIに、売上ではなく提供価値を置いた
KPIは、売上や利益を上げるための指標として扱われることが多い。私たちは売上や利益よりも「提供価値」を頂点に考えたい。よって提供価値をKGIに置いた。収支のKGIもあるが、それは一つにすぎない。メンバーが日々の判断で動かせて、お客様の体験に直結する数字にするためだ。
- 4
「その数字を追うと、何が悪くなるか」を全員で確かめた
代表への相談の「件数」を減らす案には、代表本人が反対した。本当は聞くべき相談まで我慢させるからだ。そこで、質問の質が上がれば自然に減る「往復の回数」にした。こうした議論を重ねることで、数字がその形になった理由まで、全員が分かっている状態になった。
- 5
一人ひとりの「やりやすさ」を聞いた
KPIを見た瞬間にすべき行動がわかるKPIの方が動きやすい人もいれば、具体的過ぎない方が幅があって試行錯誤できる方がパフォーマンスする人もいる。全員に聞いたうえで、最初は行動に近い、打ち手が見えやすいKPIで始めることにした。
- 6
決めたKPIは、固定しない
完璧なKPIは最初から作れない。追ってみて効かなければ変える前提で、まず一度やってみることにした。
「完璧な納品」を何で測るかを話し合ったとき、最初に出たのは「納品後にお客様からお問い合わせが来ないこと」でした。
すぐにメンバーから問いが返ってきました。
「お問い合わせがなければ、本当に完璧と言えるのか」
お客様は、不満があってもわざわざ言わないことがある。完璧な納品は、お客様にとっては「当たり前」でもある。
話し合いの結果、KGIは「納品後のお問い合わせ件数」のままにしました。ただし、お客様の声は別の場で定期的に聞くことにしました。結論だけを見れば、最初の案と同じです。違うのは、その数字では測れないものがあることを全員が知ったうえで追っている、という点です。
結果
何が、 変わったか
行動が変わった
一番はっきり表れた変化は、各メンバーが自身が追うべきKPIについて誰に確認をするでもなく、行動を開始したことです。 1つの例はお問い合わせの解決の速さを受け持った担当者が、指示を待たずに自分で現状を数え始めたことです(記事「まず現状と向き合うこと — 問い合わせ73件を、1件ずつ数えました」)。これまでなら、経営が声をかけて始まることが多かった種類の取り組みです。 KPI設定後の振り返りでは、メンバーから「数字を追うと何かが悪くならないか、という視点が今までなかった」「一人で考えると一方向しか見えない」という声が出ました。進行した大堂自身も、準備の段階では「完璧な納品=ミスの数」だと考えていましたが、議論するうちに考えが変わりました。 ここで決めたのは、何を追うかという項目までです。会議を結果発表会にしないための取り組みは、これで終わりではありませんでした。それは次の記事で書きます。
HR.Aの視点
なぜ、 この やり方なのか
私たちは、提供価値を最大化する方法の一つとして自律駆動を選んでいます。そして自律は、任せるだけでは力を出し切れません。目的や理念、行動指針、ルール、属人化しない業務設計やシステム。そうした土台がそろって、一人ひとりの判断は速く、強くなります。KPIもその一つです。だから私たちは、KPIを配るのではなく、一緒に見つけることにしました。何のために、何を、なぜ追うのかを自分の言葉で説明できること。お客様に届く提供価値は、その上に積み上がっていくと考えています。